厚木市の「あおき動物病院」は、犬や猫の尿結石、腎臓病や膀胱腫瘍、会陰ヘルニアなどに力を入れています。
近年、獣医療も進歩し以前と比べ様々な検査、治療ができるようになってきました。
当院では開業時より特に腹部外科と腎泌尿器疾患に力を入れて診療を行っています。とはいっても、どんな検査でどこまで診断ができるの?どんな病気があるの?いう疑問もあると思いますので、当院で実施している病気の治療や検査も含めてご説明いたします。
Perineural hernia
そもそもヘルニアは本来中に収まっている臓器などが脱出してくる病態になります。
したがって、椎間板物質が脊髄に飛び出てくれば椎間板ヘルニア、臍部からお腹の内容物が飛び出てくれば臍ヘルニア(いわゆるでべそですね)となります。
会陰ヘルニアという病気は会陰部(かんたんに言うと肛門の周囲)でのヘルニアになります。
一般的に犬で多く、未去勢の中年以降のワンちゃんでの発症がほとんどです。よく吠えるといったことも症状を進行させる要因になります。病気としては肛門近くで直腸をささえている筋肉が薄くなることで起こり、初期のころは排便時間の延長、しぶりといった症状がでます。
ただし、ひどくなると直腸の蛇行や下腹部にある膀胱が反転してヘルニア孔から出てくるため排便・排尿困難といった症状が現れ命にかかわるケースもあります。
治療法は内科治療では便を軟らかくしたり、食事を変更してみるなどがありますが、根本的治療になると外科が一番の有効策になってきます。また予防方法としてはワンちゃんでは若いうちでの去勢手術になります。
外科治療としては昔から色々ありまして、開いてしまったヘルニア孔を筋肉で縫合、シリコン製の専用材料で穴をふさぐ、骨盤についてる筋肉を利用して縫合等々になります。最近では、自分の恩師である麻布大学附属動物病院の渡邊俊文准教授が考案した術式で、人に使われている医療用メッシュを利用する方法が成績も非常に良く、当院ではこの方法をお勧めしています。
ちなみに診断は基本的には、問診と直検を含めた触診で十分ですが、病態を把握するためにはレントゲン検査も必要になります。
中年期以降の未去勢のワンちゃんで”最近便の出が悪いかな?”と思ったら、まずは受診をお勧めします。
もちろん必ずしも会陰ヘルニアというわけでなく、前立腺肥大症などのほかの理由もあります。
Case
症状も軽度なものから重度なものと様々です、実際に写真でどのような症状なのか説明していきます。
この子は後ろから見ると、普通じゃない?と思われるかも知れませんが、排便障害がすでに出ており横から見ると肛門の下が膨らんでるのがわかると思います。
この子は人工物をロール状にして挿入し、ヘルニア孔を閉鎖したようですが、反応を起こしており術後から排便障害も再発し来院された子です。肛門の左下に瘻管形成されており、常に炎症による液が出ているケースでした。
この子も排便障害を主訴に来院されました。見ておわかりかと思いますが、肛門の位置がおかしいのがわかると思います。後ろから見ると、肛門の出口が左を向いており、周囲も変に腫れてます。
これは直腸が蛇行し便が溜まっていたためです。横から見た際も肛門が後ろに飛び出ているように見えます。これも会陰ヘルニアにより肛門の位置が変わってしまったためです。
ちなみにみんな毛が刈られているのは、手術前だったためです。この後、写真の犬達は無事に退院しています。術中写真、術後写真もお見せしてもよろしいのですが、痛々しいですし、血がダメな方もいると思いますのでここには掲載しません。
また、最近ヘルニアを起こしている肛門横を、圧迫することで排便を出しやすくサポートしてあげるオーダーメイドの装具もあります。あまりひどい会陰ヘルニアには使用できないかもしれませんが、他にも疾患(例えば心不全や肺疾患)があり全身麻酔をかけること自体が危険な子には有効な場合もあります。
診断は基本的には、身体検査と直検で判断できますので、初めて来院されてこのようにお尻丸刈りはしませんのでご安心を。
変にお尻が腫れている気がしたり、便が出ずらいといった排便障害(ひどい時は排尿障害もあります)があるようであれば、一度ご相談くださいね。