厚木市の「あおき動物病院」は、犬や猫の尿結石、腎臓病や膀胱腫瘍、会陰ヘルニアなどに力を入れています。
Ureteral stent
最近、猫ちゃんで尿管閉塞を起こす子が以前よりも多くみられます。尿管は腎臓から尿を膀胱までつないでいる管ですが、閉塞を起こす原因としては尿管結石による閉塞や、炎症等でも閉塞することが考えられます。
腎臓は左右一対あるので片側のみが閉塞をした場合は、反対の腎臓が正常であれば症状に気づかないこともあります。しかし、すでに片側の腎臓機能が低下、もしくは両側の尿管閉塞を起こしたときは命にかかわりますので注意が必要です。
治療方法としては内科療法で好転しない、もしくは緊急のときは、尿管切開による結石摘出、尿管の一部が強い炎症を起こしている際はあわせて尿管転植といったことを実施します。また、近年では尿管にチューブを設置して流れるようにする尿管ステント、尿管は無視して腎臓と膀胱を人工のチューブでつなぐSUBシステムといったものがあります。
全てを説明すると長~くなってくるので、今回は当院で尿管ステント設置をおこなった猫ちゃんの症例をご紹介します。
Ureteral obstruction
この子は2年ほど前に当院に来院されました、この時点で右腎臓は萎縮しすでに機能がなく、左側は尿管結石による尿管閉塞を起こしていました。このときは尿管結石除去と尿管転植を実施し、元気に退院しました。
その後は左腎臓内に小さな結石があったため、定期的に経過をみていましたが、今回、急に調子が悪くなり、血液検査では腎機能の低下がみられ、レントゲン(術前レントゲン)で左腎臓内にあったと思われる結石が2個尿管に流れ途中で閉塞を起こしており、超音波検査(超音波画像)でも水腎水尿管を起こしていました。
ちなみに、水腎水尿管というのは尿管閉塞をおこしたりするとみられる所見で、腎臓が尿は作るけど流れないために腎臓内と尿管が通常より拡張してしまう病状です。急性腎不全を起こしており早く閉塞解除してあげなければいけない状況、過去に尿管結石を除去していたが腎結石が流れてきて再び閉塞してしまったこと、右腎臓機能は低下しており左腎臓をなんとか助けてあげないと亡くなってしまう、等々から尿管ステント(ステント)の設置になりました。
Surgical method
手術はまず尿管結石を2個除去(術中写真1)しあわせて膀胱切開も実施し、尿管切開部位から腎臓側と膀胱側へ尿管ステントを挿入し設置(術中写真2)します。
ちなみに左右はピッグテールというのですが、ブタさんのしっぽのようになっており、腎臓内で丸まることで抜けにくくなります。
またこの子はすでに尿管を繋ぎ直しており、通常よりも短いことから膀胱側の長すぎるステントは少しカットし、最後に切開した尿管と膀胱を縫合します(術中写真3)。
しっかり設置されているのを確認したら、通常通りお腹をとじて終了です(術後レントゲン)。
その後、この子は腎機能数値も改善し元気にしています。
この子は今回、尿管ステントを設置しましたが、なんでもかんでも尿管閉塞に設置するわけではありません。
尿管閉塞の治療は、現在も様々な獣医師が検討、実施しています。これは私の意見ですので、違った考えをお持ちの先生もいるかとは思いますが、私はなるべく人工のものに頼らず治せるのが一番いいと思います。
その為、可能性があれば尿管切開、尿管転植、またその前段階で一時的に腎臓にチューブを設置して尿を外に出す、腎瘻チューブといった外科治療も組み合わせておこなうこともあります。
様々な術式関しては一言では説明できないので、ご相談頂ければ診察したうえでご説明したいと思います。