厚木市の「あおき動物病院」は、犬や猫の尿結石、腎臓病や膀胱腫瘍、会陰ヘルニアなどに力を入れています。
など、一括りに「下痢」と言っても様々な症状の出方があります。
症状の出方や発症年齢などいろいろな要因によって疑われる原因が異なるため、今回は日ごろ私たちの病院で診察する上のポイントや検査の進め方、治療法などを紹介します。
Flow
症状が強い場合や対症療法での改善がみられない場合には、血液検査やレントゲン検査、腹部超音波検査、バリウム造影検査、内視鏡検査などを用いて診断を進めていきます。
また、治療を行ってもなかなか下痢が改善しない場合、便の中の細菌叢の変化を確認することがあるので来院の度に便を持参していただけるとありがたいです。
Case
生後1ヵ月齢位の野良の仔猫を保護して育てていたけど便が緩いのが気になるという主訴で来院。
糞便検査で回虫卵見つかり、その日に駆虫薬で治療。
これで大丈夫と思っていたら4ヵ月後再び下痢になり、診察へ行き糞便検査を実施したところ、回虫卵が見つかった。
回虫は母親の胎盤や乳汁を介して仔犬や仔猫に感染します。大部分は小腸内に寄生して繁殖しますが、稀に他の組織へ入り込んでしまうことがあります。寄生虫の駆除薬により小腸内の虫体は死滅しますが、組織内に迷入した虫体には効果が弱いことがあり、今回のケースでは生き残った虫体が産卵して繁殖した結果、症状の再発につながってしまったと考えられました。
当院ではこのようなケースがあるため、3~4週くらい間隔を空けて、計2~3回駆虫剤を使うことを勧めています。
8歳の成犬、4~5日前から下痢になり、一度排便するとしぶりながら何度も排便するため来院。
拾い食いや食事変更はなし。糞便検査にて細菌叢の乱れを認めたため抗生剤と下痢止めを使用したが、2週間以上内服している間も粘血便が出ることがあった。再度実施した糞便検査では細菌叢は改善していて、血液検査・レントゲン検査・超音波検査も異常はみられなかった。
この症例は単純な細菌性の大腸炎を疑って治療を開始しましたが内服薬に対する反応が芳しくなかったのですが、食物繊維が豊富な消化器疾患用の食餌に変えたところ症状が改善しました。
食物繊維には腸内の善玉菌を増やす作用があります。善玉菌が増えると悪玉菌の増殖が抑えられるので腸内細菌叢が整いやすくなります。また、食物繊維の中でも不溶性繊維は便を硬くする作用があるため、今回のケースでは両方の作用がうまく働いてくれたと考えられました。
今回のワンちゃんも食餌を以前のものに戻したらまた便が緩くなり始めたのでそこからは食餌療法を続けていくことになりました。
食餌療法は症状が改善したらやめていくケースが多いのですが、今回のように薬への反応性が乏しく食餌療法で治る場合はそのまま食餌療法を継続した方がよいこともあるので、どのような治療がベストなのか飼い主さんと一緒に考えていきたいと思っています。
13歳の高齢犬、食欲・元気は年相応だが数ヵ月前から血便が出るため来院。
直腸検査でポリープ状のものが触知されたことから後日内視鏡を実施。内視鏡検査で採材した組織の病理検査結果は炎症性ポリープだった。
内視鏡後しばらく調子は良かったが、ある日の夕方突然脱腸してしまい、無麻酔での整復は困難であったため緊急手術となった。
手術は脱腸した部分を切除して正常な部分同士を縫合する方法をとった。
術後はもともとの炎症性ポリープの再発防止のため投薬治療を継続している。
持続する血便は単純な大腸炎ではない可能性があり、今回のワンちゃんは高齢であることや経過が長いことから腫瘍も考慮して問診や検査を進めなければいけませんでした。
内視鏡検査結果は炎症性ポリープという良性の病変でしたが、この病気は投薬などで適切に管理していてもすぐには良くならず、再発や悪化しやすい病気で根気よく治療していかなければならないことが多い病気です。
万が一脱腸してしまった場合、放置してしまうと脱腸した部分が壊死して脱落する恐れがあるためできるだけ早めの受診をお勧めします。
内視鏡画像
術前写真
術中写真
術後写真